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2.ヨーロッパの小康期(7月〜8月)

チェコの「アフター・コロナ」

 さて、早々と強い規制を課されたチェコ演劇界であったが、その立ち直りも早かった。小さな波が過ぎ去り、4月下旬には1日の新規感染者数が二桁台に留まるようになった。4月30日に緊急事態宣言が解除され、5月11日からは小学校低学年の児童が登校できるようになった。6月8日には、500人以下のイベント開催も許可された。わたしも6月26日、さっそくプラハで行われたオルタナティブ・ファンク・バンドの野外コンサートに出かけた。マスクをしている人は殆ど見当たらず、会場は大盛り上がりであった。(図4)

(図4):プラハ市内の野外音楽フェスティバル、Lucerna Music Bar Open Air会場の様子(撮影筆者)

 7月1日にもなると、プラハはすでに「コロナ後」の世界を謳歌していた。観光名所であるカレル橋に、500mもの長さのテーブルをおいて、市民が食べ物や飲み物を持ち寄り、「さよならコロナ」食事会を行ったのである1)BBC News, “Coronavirus: Czechs hold ‘farewell party’ for pandemic”閲覧日:2020/11/26; Rob Picheta, CNN, “Prague celebrates end of coronavirus lockdown with mass dinner party at 1,600-foot table” (閲覧日:2020/11/26。事前予約制の2000席は全て埋まったという。また8月22日には、町の中心を流れるブルタヴァ川にかかる陸橋から、フリーダイブ大会が開催された。水着姿のダイバーたちが橋からアクロバティックに飛び降り、水しぶきを立てて川に落ちる様子を、川沿いに並んだ大勢の見物人が楽しんでいた2)大会の様子の動画:Reuters, “Daredevil high divers plunge into Prague’s Vltava river”(閲覧日:2020/11/26
 そのころ日本はどうだったかというと、いわゆる「第二波」の最中にあった。日本政府はそれを「第二波」と呼ばなかったが、7月末から8月にかけて1日あたり新規陽性者数が1500人を超える日が続いており、最高でも700人台だった「第一波」と比べても、「第二波」が生じていることは明らかだった。夏休みに入っても、人形劇場に足を運ぶ子供の数は少ないままだった。

人形劇フェスティバルの再開

 日本人形劇界の相変わらずの窮状と比べて、バカンス・シーズンのチェコ人形劇界は、すでに一歩も二歩も先に進んでいるようであった。チェコ最大の国際人形劇フェスティバル≪スクポヴァ・プルゼニュ≫を主催するのは、ビールで有名なプルゼニュ市にある「アルファ劇場」(Divadlo ALFA)である3)アルファ劇場のウェブサイト(閲覧日:2020/11/26。アルファ劇場は6月12日に劇場公演を再開したが、これはコロナに伴う劇場閉鎖後、チェコ国内の有観客の劇場上演としてもっとも早いもので、「コロナ後初の演劇公演」としてチェコ国営テレビのニュースで報道された。(図5)

(図5):アルファ劇場内、来場者手指消毒の様子(撮影筆者)

 10月のフェスティバルも、もちろん有観客で開催できるだろうという見通しだった。チェコのみならず、ヨーロッパの中でも比較的感染状況の良かった各地域では、すでにオフラインでの人形劇フェスティバルが再開していた。私が知るだけでも、9月18〜24日にはクロアチアで最も歴史ある国際人形劇フェスティバル≪PIF≫(ただし当初の予定から上演作品数削減、一作品はオンライン上演)4)フェスティバル≪PIF≫のウェブサイト(閲覧日:2020/11/26、10月2〜8日にはスロヴェニアの国立リュブリャナ人形劇場が主催する、大人の観客を対象とした国際人形劇フェスティバル≪LUTKE≫(ただし当初の予定から一ヶ月延期開催)5)フェスティバル≪LUTKE≫のウェブサイト(閲覧日:2020/11/26が行われた。いずれも当初の予定よりは多少上演回数を減らしたものの、海外劇団も招聘し、有観客での劇場開催を果たした。≪PIF≫は海外9劇団、国内4劇団、≪LUTKE≫は国内8劇団、海外6劇団を招聘した。

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