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1994年に創刊した『シアターアーツ』は、2004年の[第二次]、2010年からの[第三次]と体制を代えながらも20年にわたって刊行を続けてきた。刊行20年を機に、季刊誌からウェブを中心に雑誌を継続するに至った。当ウェブマガジンは、国際演劇評論家協会(AICT)日本センター所属の劇評家らが、劇評をはじめとする批評を発信する場所である。媒体は変わるが、これまでと変わらず演劇批評の専門誌としての倫理を維持してゆく。

そもそも『シアターアーツ』は、劇評家自身が批評の場を作り出すために創刊した雑誌であった。雑誌を巡る状況は20年の間に変化し、紙媒体で雑誌を刊行し続ける財政的余裕がなくなった。しかし、劇評家が発行する批評誌の存在を失わせてはならない。その使命感が、ウェブマガジンとして再出発するに至った動機となった。

ウェブサイト版『シアターアーツ』では、演劇を消費しないための批評を掲載する。日々上演されている舞台がしっかりと評価されず、使い捨てにされているのではないかとの思いがあるからである。それは、「最新」の情報によって次から次へと上書きされてゆくネット環境と通じるものがある。当ウェブマガジンでは情報を刷新することだけを目的とせず、腰を据えてひとつの舞台に向き合って批評する。そのことを通して、演劇および批評とは何かを問う場にしたい。情報が外へと拡散しやすいインターネットの利点は大いに活用しつつ、これまで通り深く舞台を読み解く姿勢を堅持すること。深い内容を伴った批評を広く届けたいという意味が、副題には込められている。

また『シアターアーツ』の発行母体であるAICT日本センターと主催で、劇評家講座を行っている。劇評の執筆や演劇を巡る諸問題を受講生と対話する場として、2012年に始まった。読者の顔や実数が把握し辛いネットマガジンとは対照的な、人と人が直接対峙する活動としてますます重要になるはずだ。劇評家の仕事は文章による批評行為だけに留まらない。今日において劇評家が起こすべき行動とは何か。ウェブマガジンと講座を連動させる中から探ってゆきたい。

『シアターアーツ』編集部
今村修、坂口勝彦、柴田隆子、嶋田直哉(編集長)、野田学、鳩羽風子、藤原央登

 

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