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未来の舞台芸術にふさわしい新しい職性――その技能と構造

 未来の舞台芸術は新しい物理的な建築物、内部組織、上演形態を必要とするがゆえに、そこでは、あたらしく、より臨機応変で柔軟な組織やビジネスへの接近方法が要請されるし、芸術運営や制作に対する考え方も刷新されなくてはならない。

 伝統的な演劇学校の代わりに、俳優の訓練には多元的で、より多分野に亘るアプローチが必要であり、創造、制作、消費の関係が新たに構想されなくてはならない。最新のテクノロジーによって増幅された生の活性化された世界にあっては、身体で演じることとテクノロジーに基づく訓練とが相当に近接したものとなるからである。

 統的な舞台芸術の演出家の代わりに、「生の増幅」によって自らの作品を有機的で、創造の過程の内部に完全に組み込まれた要素のひとつとして発展することができるような新世代の演出家を育てる必要がある。

 伝統的な俳優の代わりに、歴史上、芸術家と観客とを分け隔てていた境界が浸透可能な皮膜となるような俳優が必要だ。そうした俳優にとっては、自らの働きがもたらす技能の拡張と想像力の向上は毎日与えられるものとなる。

 伝統的な劇場経営者の代わりに、未来の舞台芸術は「生の増幅」という観点から、上演に対して統合された見方をする必要がある。このことは作者、観客、および交渉に対して開かれた消費者とのあいだの新たな関係を要請するだろう。

 伝統的な市場経営の代わりに、観客や消費者、関係する個人とのより洗練された相互的な対話が要請されており、芸術家と観客とのあいだの伝統的には不可侵の境界をどれだけ越えられるのかという認識が必要である。

 会計の訓練を受けた伝統的な財政管理者の代わりに、ビジネスモデルや歳入の設計に関して、より洗練され革新的なありかたを模索する必要がある。

 舞台芸術にすべての人が参画できるために専門分野を超えた協力が必要であり、そのためには、新たなビジネスや組織の構造は伝統的な技能による分割を踏襲するものであってはならないだろう。そのことは、(しばしば権力や資源の分配が不平等で排除に基づく中央集権的なものであった歴史に起因する)伝統的な職業的階層構造を解体することでもある。 

 代わりに我々が構想すべきなのは、仕事方法の根本的な革新をめざし育て実現していけるような新しい働き方をもっとも優先すべき課題として認識することである。

 未来の演劇のための舞台芸術職が以上のように拡張する宇宙を形成しつつあること、これは次第に形をなしてきている。以下は、その結果として出現してくるであろう、推察も含めたメディアを横断した職制のリストである――

待機室運営者
 Zoom時代の等価物として、デジタル空間の待機室で観客を迎え、舞台が始まる前に観客の注意を集中させる仕掛け人。観客を活性化し集中させる役割を果たす限りにおいては、俳優でも音楽家でも喜劇役者でも、カーニヴァルの先導人でも奇術師でも構わない。

仮想空間管理者
 独立したテクノロジー空間の専門家で、制作のあらゆる必要に応じられるソフトとハード両面のデジタルプラットフォームを舞台芸術が利用できるよう助力する。エンタメ産業と強いつながりを持ち、配信コンテンツを制作者消費者双方の利益となるように支援維持する役割を果たす。

遅延管理責任者
 当面のあいだ、メディアを横断するデジタル上演においては、視覚聴覚面での遅滞は避けらない。そこで遅延管理責任者は、制作者兼技術者として、そのような「変則的事態」があらゆる上演にあらかじめ組み込まれた特質であるかのように即興的な介入によって見せる仕事を請け負う。

ライブ字幕支配者
 電子的にネットワーク化された舞台芸術はアクセスの度合いを増幅させるとともに、字幕を付加することで新しい表現様式をも生み出す可能性を秘めている。ライブ字幕は多くの役割を果たしうる。それは舞台を適度に文章で助けることで言語や歴史の制約、複雑な内容といった困難を軽減することができるだろう。字幕はまた、フィードバックや注釈によって異化効果や笑いといった劇的効用を果たすことで、それ自身が上演様態の一部となることもできる。

映像演出者
 映像の演出家として、デジタル、拡張現実、仮想現実といった空間を創造的批判的にデザインする訓練を受けており、舞台装置デザインの技能や手段をデジタル環境や新たなハイブリッド映像空間の探求に適用する職制である。

アクセス監察者
 観客とスタッフの設備へのアクセスから、遠隔観客のオンラインによるアクセスまで、参入や利用に関するあらゆる事柄に責任を持つ。この責任は、準備や計画だけでなく、現場や配信中の問題解決も含む。

舞台助産者
 現場の制作者として、アナログとデジタルの断絶を超えた新しい作品を生み出す責任を担う、単に技術的ではなく創造的な役割であって、上演が現場や空間の特殊性に囚われずに、録画、放送、遠隔視聴の必要にも見合うように解釈することをめざす。

運送管理者
 舞台芸術の企画に最初から参画して、その上演が複数の場所で行われるように輸送可能なものとするための手段や書類作成、技術的援助を行い、人員が上演とともに旅する必要性を減らしたり除去したりする役割を担う。