ありのままの身体を感じるために――ままごと公演『わたしの星』を観る/嶋田直哉
あまりにもあけっぴろげな身体に打ちのめされてしまった。このような経験はそうそうできるものではない。ままごと公演(作・演出=柴幸男)『わたしの星』(三鷹市芸術文化センター星のホール 2017年8月17日~27日)で最初に興味を抱いたのは高校生キャストの等身大の身体が醸し出す強度と自由さだった。
物語は柴幸男『わが星』(2010年)の世界観を引き継ぐ形ですすめられている。舞台は未来の地球の小島。火星移住が進み小島はもちろん地球全体に過疎化が進んでいる。小島に残された全校生徒10名の高校生たちは文化祭の出し物であるミュージカルの準備を進めていた。みんなをまとめようとするヒビラナ(日比楽那)ではあるが、個性的な生徒たちを前になかなか練習は進まない。そんな中、スピカ(札内萌花)が明日転校し、火星へ移住すると言い出す。驚く生徒たち。その中でもスピカと同じ学年のヒナコ(須藤日奈子)は冷静さを保ちながらも複雑な心境だ。そのような中、彼女と入れ替わるように火星からヒカリ(札内萌花がスピカと2役)が転校してくる。ざわつくケンジ(成井憲二)とジュン(松尾潤)の兄弟たち。火星に興味津々のイズミ(太田泉)。ともあれ新しく加わったヒカリとミュージカルの練習は再開される。
長方形の舞台を挟むように客席は対面式に設営されている。舞台上にはやや離れて柱が2本立っており、生徒たちのミュージカルの練習を録音したカセットデッキが椅子の上に置かれている。舞台を下りた両側にはパーカッションをはじめキーボード、バイオリンなどの楽器が置かれ、キャストたちが舞台に出入りしながら演奏もこなす。そのシンプルな音楽が場面にマッチしてドラマを大いに盛り上げる。
この公演は2014年に次ぐ再演だが、今回は新たな現役高校生がキャストとスタッフを務めまさに(いい意味で)文化祭のノリで作り上げた舞台である。舞台を観れば柴幸男自身が高校生とワイワイしながら作り上げたことが容易に想像できる。かといって舞台の水準が低いというわけではない。むしろ「高い」「低い」といった評価基準を飛び越え、現役高校生キャストたちの無防備でありのままの身体表現に驚いてしまうのだ。それが最も象徴的に感じられたのが物語の終盤、みんなでダンスの練習をする場面だ。照明がやや落とされた中で決して訓練されたキレのあるダンスではないものの、この単純なステップの中には紛れもなく〈今・ここ〉での現役高校生でなければ出せないありのままの身体、あけっぴろげで観客の内面にごく自然に対峙するしなやかな強度を保った自由な身体があるのだ。そしてその身体はあまりにもナイーブで、それゆえに瞬間的に消えてしまう。その一瞬の身体を感じるためにこの作品は存在するといってもいい。
柴幸男の作品は『わが星』『あゆみ』など多くの人びとに親しまれ上演されている作品がある。『わたしの星』もまた多くの人に愛され上演され続けることを祈りたい。