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 国際演劇評論家協会日本センターが発行する演劇批評誌シアターアーツは、2012年6月発行の第51号より新体制の編集部となりリニューアルいたします。

 昨年3月11日に起きた東日本大震災は、舞台芸術の世界にも大きな問題を投げかけました。カタストロフ的状況下における表現活動の有効性、あらゆる表現が震災と結びつけられてしまう観客側のトラウマ、表現者による被災地支援活動のもつ意味、被災者の心のケアに対する芸術の効果……。また批評の分野では、震災をモチーフにしたり、被災者自身が作った舞台に対する批評の在り方、3,11以前と以降に発表された作品を同列に語ることの可否などが課題になっています。
 さらに福島第一原発事故以降、私たちを取り巻く日本の、また世界の情勢も混迷を深めています。様々な情報が処理しきれないほど大量に飛び交う中、何が正しい情報で、事実がもつ意味は何なのか、私たちは読み解く事すら出来ないもどかしさの中にいます。今、最も求められるのは自ら生きるために必要なものは何か、情報から読み解き判断する力です。そして、こういった時代における舞台芸術と批評のあり方はどうあるべきか?  そのまだ見ぬ答えを探して、第三次シアターアーツの第二シーズンが始まります。シアターアーツは劇的知の大海を進む人を支える羅針盤です。
  シアターアーツは、3つの形で展開していきます。
  1. シアターアーツon the NET:ウェブサイト、Twitter、Facebook、Ustreamなどで情報を展開。
  2. シアターアーツon the SEMIMAR:杉並区の公共劇場、座・高円寺との提携による劇評講座を6月から毎月開催。
  3. シアターアーツon the MAGAZINE:シアターアーツの活動の拠点は雑誌。グローバル経済が進む中で広まる「早く、手軽に、分かりやすく」という状況に対して、「じっくり、手間をかけて、難解なものも切り捨てず」対応していきます。
  上記の編集方針のもと、若手批評家の発掘・育成を果たすことも大きな目標です。
 また編集部の顔ぶれではこれまで8年間シアターアーツの編集に携わってきた西堂行人編集長と江森盛夫が卒業し、柾木博行が新編集長となり、舞踊担当として坂口勝彦が加わります。また、編集内容としては従来の演劇時評、小劇場時評に加え、ダンスとミュージカルの各連載時評を新設。その他にも新連載コーナーが加わり、より魅力的な誌面作りを目指します。
 これからもシアターアーツをご愛読下さいますよう、よろしくお願い申し上げます。
第三次第二期シアターアーツ編集長 柾木博行