豊島区テラヤマプロジェクト ミュージカル『青ひげ公の城』── 江森盛夫
昭和27年に開設され、豊島区の文化活動を支えてきた豊島公会堂が、新ホールへと生まれ変わる。その最後を記念して、2012年から始まった豊島区と流山児★事務所が提携した企画、寺山修司の作品を連続上演する豊島区テラヤマプロジェクト。12年『地球☆空洞説』、13年『無頼漢』、今回のファイナル公演が『青ひげ公の城』(作:寺山修司、音楽:宇崎竜童、振付:前田清実、演出:流山児祥)。
まずは恒例になった幕開きのセレモニーが、公会堂前の中池袋公園から始まる。公園の広場に、『青ひげ公の城』のオーディションという設定で、流山児が仕切り、本舞台でも舞台監督役の大久保鷹に進行させて、集まった客に台本の冒頭を男女別に読ませる。
【プリント】
青ひげ「そんな恐ろしいところに、どうして嫁いできたのだね、ユディット」
ユディット「あなたの腕の中で花嫁衣装を着たいからです」
そして、集まった全員で、豊島公会堂を指さし、「あれが青ひげ公の城だ!」と叫ぶ……。そして公会堂へなだれ込むように入ってゆく……。
この1979年にPARCO劇場で初演された魔術ミュージカル、今回は異色豪華キャスト。第一の妻が、流山児★事務所のトップ女優の伊藤弘子、第二の妻が前進座の立女形の河原崎國太郎、第三の妻が文学座の美形女優山崎美貴、第四の妻がミュージカル界の新星関谷春子、第五の妻が宝塚出身のベテラン毬谷友子、第六の妻が元SKDのトップスター風間水希、そして第七の妻になる、第六の妻が死ぬことを心待ちにしている少女をSPACの美加理が演じた。彼女はこの芝居の初演で、双子の少女アリスとテレスの片方を演じて、それが彼女の初舞台だったのだ。ほかに元天井桟敷の蘭妖子、福士惠二。このほか総勢28人のキャストが、このファイナル公演をひたすら盛り上げて、テラヤマワールドの絢爛と底知れぬ闇の世界の輝きを放ったのだ。
寺山は、演劇の役とは、それを演じる俳優とは、その俳優の生活とは(第五の妻の家には高島屋の販売人がたまった衣装代の取り立てに連日来て、第五の妻は、いいわけに大わらわ)、その事実と虚構の狭間で生きる俳優、そして人間への問いを、その問いそのものを演劇化したのだ……。そして、その問い自体は永遠に新しい。流山児はそのことをしかと体感させるファイナルのミュージカルを創り上げて、この豊島区テラヤマプロジェクトを見事に終了させたのだ。
(2014年11月21日〜30日/豊島公会堂)