報告②/BeSeToシンポジウム「演劇におけるポストヒューマン的転回」
演劇『千個の青』が提示する多種間の連帯、およびポストヒューマン的想像力/キム・ジュヨン(演劇評論家、清州大学演劇学科教授)(翻訳=シム・ヂヨン)



Ⅰ.はじめに
最近の動向として、韓国の舞台芸術においてポストヒューマンをテーマや題材にした作品が急速に増えており、ロボットが俳優を演じ、動物や昆虫、微生物と無生物などの非人間的な存在が登場する舞台が上演されている。特に、AIの飛躍的な発展と、それに対する社会的な関心の高まりによって、未来を舞台にロボットとアンドロイドを取り上げる演劇、ミュージカル、創作オペラに至るまでジャンルも増えてきている。このような題材を取り扱った過去の作品はディストピア的な想像力を基にしたストーリーが占めていたが、最近では近未来を舞台に人間、ロボットおよびAIが共存する日常を描いている点が注目に値する。舞台芸術の中でポストヒューマンが題材やテーマとして幅広く取り扱われていることは興味深いが、その多くが完成度ではなくその実験的な試みが評価されているだけで、幅広い観客から支持や好評を得ているとはいえない。
その中でポストヒューマンを取り扱っている二つの韓国の作品が国を超えて注目を集め、世界的な評価を得ているとのニュースが話題となった。一つは、2024年に韓国で初演された演劇『千個の青』。その原作の同名小説がワーナー・ブラザースと映像化の契約を結び、ハリウッドで実写映画化されるという。もう一つは、2025年にブロードウェイへ進出した韓国の創作ミュージカル『メイビー、ハッピーエンディング』。トニー賞で6部門を受賞した。この二作品のジャンルは異なるものの、ロボットという非人間的主体を舞台に登場させ、ポストヒューマン的な感性を示している。この点が国内外で幅広い共感を呼ぶ成果へとつながった。
両作品はいずれもSFものに多い、未来社会が舞台の壮大なファンタジー、ロボットの反乱、人類滅亡などのディストピアを描いてはいない。それよりもデジタル化とともに社会的孤立が進む中で疎外される人々がどのようにして愛し合って思いやるかという、愛・ケア・死などの普遍的なテーマについて非人間的な存在を通して探っていくことから観客の幅広い共感へとつながっている。また、両作品とも人間が起こした問題を人間‐非人間の共存や連帯によって解消するというオルタナティブな想像力を示していることから、新しいポストヒューマン的な世界観が浮かび上がる。興味深いのは、これらの内容が「伴侶種」、「一緒になる」などで知られるダナ・ハラウェイのポストヒューマン論とも深く関わっている点である。ポストヒューマンが登場する様々な舞台の中でも、人間と機械や、種を超えた連帯、新しい関係づくり、ケア、憐憫という、最も「人間的な特徴」であるテーマを描くこの二作品が、観客の大きな支持を集め、世界的な評価や幅広い共感へとつながっている点はさらなる考察の必要がある。本発表ではこれらの点に焦点を当て、韓国国立劇団の演劇『千個の青』が描く多種間の連帯およびポストヒューマン的想像力について考えてみたい。


